〇ストーリー
主人公は死神で、対象の人物が死んでも良いかを判定する「業務」を行っている。
大抵は可といって死んでも良いという判断をするが、まれに見送りと判断をする時がある。
ジャンルでいうと推理小説の向きもなくはないが、どちらかというとSFのブラックコメディといったところか。
ある意味、水戸黄門のような分かりやすさとは方向性が違うので、読み手を選ぶ作品かも知れない。
短編集で全6話となる。
文体は一人称である。
おそらく死神の視点が物語の軸となるので、一人称を選んだと思われる。
〇発展の考察
お仕事小説として、主人公は普通じゃありえない人物はどうだろうか。
たとえば、タイムカード改ざん、セクハラ、パワハラ、残業代未払い、などなど不正があったとして、たいていは不正の隠蔽を行う。
そして死神のような、人間を超越した存在が隠ぺいを全てバラしていく・・・といった展開は面白いのではないか?
その場合、神だと全知全能になってしまい説教臭くなる、悪魔だと良いことをする矛盾がある。
死神は神と人間の中間に位置すると言っても違和感がなく、しかも作中では調査部といった部署に所属している。
「まったく、情報部は中途半端な情報しかよこさない」といった、いかにもサラリーマン的な内面描写は死神をとても親近感が湧く存在にしている。
おそらく、伊坂幸太郎もあえて人間臭く演出したのではないだろうか。
ちなみに、チャットGPTにて労働の神様を抽出したのは下記となる。
① 天手力男神(アメノタヂカラオノカミ)
概要:天岩戸の神話で、天照大神を岩戸から引っ張り出した力の神。
関連性:肉体労働や力仕事の象徴。正義感が強く、行動派の神として、ブラック企業に乗り込んで悪を引きずり出すイメージにぴったりです。
キャラ案:筋骨隆々の肉体派、でも実は冷静沈着な判断力を持つ神様。
② 少彦名命(スクナヒコナノミコト)
概要:医療・酒造・知識・国造りの神。大国主命と共に国造りをした。
関連性:知恵と癒しの神でもあり、「人々の暮らしを良くする」方向での労働の神様としても描けます。
キャラ案:見た目は小柄で穏やかだが、ブラック企業の実態を冷静に暴き、知恵で改革するタイプの神様。
③ 大国主命(オオクニヌシノミコト)
概要:国造り・商売繁盛・縁結びの神。少彦名と一緒に日本を築いた。
関連性:経営者側にも理解を示しつつ、働く人たちの苦しみにも寄り添える、バランス感覚のある神。
キャラ案:温厚そうに見えて、怒らせるととても怖いタイプの神。
④ 事代主神(コトシロヌシノカミ)
概要:言霊の神、交渉や商売の神でもある。大国主の子。
関連性:「労働の契約」「労使交渉」などのテーマと親和性あり。言葉で戦う神として描写しやすいです。
キャラ案:ブラック企業の社長と巧みな言葉のやり取りで追い詰める知略型。
⑤ 架空の神様を創作する
既存の神様ではなく、「労働の神・シゴトノカミ」などとして架空の神様を創るのもアリです。日本神話風の名前をつけると雰囲気が出ます。
例:
職人神:ハタラクヒコノカミ(働彦神)
正義の神:マモリカミノミコト(守神命)
上記キャラが水戸黄門バリの勧善懲悪で不正を暴くのは痛快ではないだろうか。
社会的な意義もアリ、スカッと楽しめる作品になりそうだ。
ターゲット層も労働者層とすれば全体のパイもボリュームが稼げそうである。
あるいは、死神社労士的な存在はどうだろうか。
自分で手を下すのではなく、ブラック企業の社長のアキレス腱を狙う存在。
たとえば・・・
労基署調査が1か月後になり、タイムカードを改ざんし始めた → フェイントで1週間後
セクハラ上司 → 奥さんに見られてしまう
育休とったら降格させる部長 → 部長が晩婚で奥さん妊娠出産 → 部長やむなく育休希望 → 降格させられた部下に死神社労士が「どうする?あいつを降格させるか?お安い御用だ。さあ、やっちまおうぜ」
「いや、僕はもういいんです。役職が無くなって給与は減ったけど、その分家族との時間が増えたし満足です」
「けっ、つまんねえな。分かったよ。あんたの優しさに免じて、お咎めなしってか」
上記のような御用聞き死神社労士は面白いかもしれない。
最後は敵をやっつけるパターンもあれば、許してやるパターンもあるのはどうだろう。
(古いが、オレたちひょうきん族の最後の神様のような存在。ただ、決定権は被害を受けた方にある。育休で降格→許してやってください→許される 長時間労働社長 → あいつだけは許せません → わかった、せっかくなら盛大にいこう → 週刊誌にスッパ抜かれて、ネットニュース化、業績大幅ダウンなど)
業績ダウンのパターン
「いまXYZシューズにかとくが入りました。現場からは以上です」
大々的に報じられる、朝のニュース、ネット記事など → 大幅業績ダウン、不買運動
「これって、裏で手を回したのって死神先生なんでしょ?」
「さあ、なんのことかな。」
「もう、許してやってよ。仲間もリストラされたら可哀そうだよ」
「そうか、ではお前の言葉に免じて業績を回復してやろう」
「代表が変わりました!社名も変わり心機一転信用を回復していくとのことです。現場からは以上です」
→ 元社長は郷里に帰り実家の農家を継ぐことに。
「これで、よかったのか?」
「はい、みんなが落ち着くところに落ち着いて平和ならそれで」
「ふっ、お人よしだな」
〇本作品の感想
面白かったが、やはり推理物とも勧善懲悪とも違うので、最初は戸惑うだろう。
しかし、死神の独特なリズムに馴染んでくると、その奇妙なやり取りが日常になる。
そして、その言動が気になる存在になってくる。
ミュージックが好きで、人間世界に疎く、人間が死ぬのに興味ない。
ただ、なんやかんやで人助けしてしまう死神の存在は目を引くだけでなく、ある意味人間よりも人間臭い存在なのかもしれない。