〇ストーリー
短編推理小説である。
・夜警 警察系で殉職した警察官の意外な一面
・死人宿 元カノを追って宿へ行くが、ある意味有名な宿だった
・柘榴 美人姉妹のストーリーだが、官能と闇の深淵を見ることになる
・万灯 剛腕商社マンの天然ガスビジネス、無理な開発を強引に推し進めて一線を越えてしまう
・関守 ライターが峠のドライブインで取材、小柄で人当たりの良い老婆の話を聞いていると危険な眠気が
・満願 満願成就、下宿先のおかみさんが控訴を取り下げた衝撃の真実
〇感想
マジで面白かった。
推理小説を学ぶために読んだが、物語の伏線位置が巧妙で、読者を飽きさせないタイミングで結末がやってくる。
また、推理物ということで誰かが死ぬ展開が多いが、恐怖とはまた違った心の闇や葛藤を細かく描写。
殺してしまった後の後悔、バレるのではないかと常に心配する心の損耗、事件が起きた時の不可解な現象の推論など。
どの作品も読んだ後に納得感、そして感じる暗闇が人間の内面を余すところなく描いていて、一話読み終わるとまた次の作品を読みたくなる。
穂信ワールドにどっぷりとはまり、自分の中で思い入れが深い作品となった。
ちなみに、最近「米澤屋書店」というビブリオエッセイが発売されているが、非常に興味深い。
書店で見かけたら購入したいと思う。
〇物語りの考察
正統派推理小説だけに、カテゴリを変えるのもアリではないか?
たとえば、お仕事小説の推理短編はどうだろう。
社労士ヒナコは主人公が特定されているが、本短編小説のように様々な登場人物がいてもよいのではないだろうか。
・労働分野に強い社労士 田中
・社会保険や年金に強い社労士 水野
・計算に強い社労士 石川
・助成金に強い社労士 谷川
それぞれのショートストーリがあって、最後にラスボス話が出て4人が協力して解決・・・といった展開も面白そう。
不特定のブラック社長もいいだろう。
・長時間労働をやめない、タイムカード偽装社長 中田
・社会保険未加入で行政には白を切る社長 野上
・給与の残業手当や保険料をごまかす社長 川名
・助成金不正受給をやめられなくなった社長 谷中
ただ、不特定多数の人間が出てくると名前を覚えるのが大変になるので、主人公を色々設定を変えるのも良いだろう。
・20代の若い女性で社労士なりたて → 王道キャラでヒナコが存在する
・30代イケメン男性社労士と20代の新人見習い社労士コンビ → 新人見習い社労士の成長ストーリーがキモ
・女性の所長社労士と新人男性見習い社労士
・めおと社労士物語り
旅社労士なんかはどうだろう。
顧問先が各地方に点在していて、地方のメシと合わせて労務管理する展開など。
北海道、ホテル事業展開、石狩鍋、日本酒、美人の人事部員、セクハラ解決など。
非常に素晴らしい作品だった。
同じ作者の本、そして他の作者の推理小説もぜひ読んでみたい。