○オープニング
〜二人といない、好敵手。
さあ、始めよう。
わたしたちの戦いを。わたしたちの時代をー。
→最後にもこのくだりは出てくる
試合開始の前の、香織の精神統一場面、清水とのやりとり
○ストーリー
高校の女子剣道部のライバル物語。
ただ、早苗と香織は正反対の性格、剣道にもそれが出ている
二人はお互いに浸透していくように惹かれ合い、反発していく
最大のライバルと認めた早苗の強さの秘密は日本舞踊
ただ、香織は巧の強さを見て、今までの自分が崩壊してしまう
そして、香織は勝ち負けが全てではない、もっと広い意味での剣道を見つめ直す
早苗の持ち味は長く構えることだが、それだけでは勝てなくなってくる、いい意味で早苗は香織の剣道を取り入れていく
最後の好敵手の試合では、お互いが似ている剣道を展開
○展開について
一人称の女性目線だが、章立てが香織目線、早苗目線が交互になっていて新鮮、度肝を抜かれる
一人称のデメリットである視野の狭さを見事カバーしたのではないか
また、女性らしい台詞回しが秀逸
感動セリフ
P33
でも大丈夫。構えて構えて。ちゃんと距離とって。不動心、不動心。
これは早苗側のセリフだが、それぞれのキャラが立っていて、読んでるだけでどちら側かがすぐにわかる
・香織
あたし、ニシオギィ、平田サン打ちよえーよ
・早苗
チョーラッキー、私、コテもらっちゃった
武具を付けずに打ち合う、手を足で踏みつけるのは実際ではあり得ないだろうが、香織の狂気を表現する演出としては成立している
実際の女性はすぐに機嫌はなおらない気がするが、早苗のキャラ的にセーフなのだろう、武具なしで打たれて翌日に話しかけるとか
○応用への考察
・交互一人称スタイル
応用が効きそう
対戦もの全般に合うだろう
ボクシング、柔道、テニスなんかもありか
剣道は知らない人もいるから、例えばマラソンなどの知名度のある競技ならもっと売れるかも知れない、なんなら駅伝とか、箱根の坂など聖地化も視野に
・女子高生について
多感で爽やかな年頃、スポーツとマッチしている
反抗期で香織と父親の確執のプロットも物語に深みを与えている
ちなみに早苗の父は研究者で一度失敗した経営者、香織の父は警察で剣道師範
それぞれのキャラを受けているよう
これを地下格闘技にしたらどうか、スネに傷がある流れの格闘家にして、アンダーグラウンド感を出すのもあり、難易度は高そうだが
最近の世相を反映してeスポーツはどうか スト2あたりは中年層もついていけるので、ターゲットとしては成立しそう
・ライバル物語
これを恋愛物語にしたら売れないか
男性側、女性側が交互に章立て
男性脳、女性脳を浮き彫りにする
有名作家コラボなんてのも面白そう 名前で目を引けるのでは?
北方謙三・桐野夏生のハードボイルドラブ
千野隆・宮部みゆきの時代恋愛小説
長月達平と日向夏のラノベ系なんかも良さそう
とにかく、文芸エンタメとして非常に楽しかった
ここまで睡眠時間を削られた作品は初めて笑
爽快で、人間関係にあふれ、香織の無敵と無気力の落差、香織に振り回される側から対等になる早苗、玄明先生と蒲生の店主、お互いの家族がこれでもかと言うくらい存在感を主張していて、最後はページが減っていくのが惜しくもさえあった
間違いなく自分エンタメナンバー1である