〇概要
星 新一自身が選んだ短編50選の物語である。
いわゆるショートショートで1,200文字から3,000文字位のボリュームが中心となる。
ジャンルは笑いあり、ブラックジョークあり、恋愛ありと多岐に渡り特定のジャンルがない。
1話簡潔でさらっと読めるため、とても入りやすい。
長編小説は前後のつながりを常に覚えている必要があり、読み手に若干の気合いが必要だが、ショートショートは時と場所を選ばない。
老若男女が楽しめるスタイルだろう。
ちなみに出版は95刷りとなる。
〇オープニング
悪魔 金貨を欲張った主人公が死んでしまうストーリー。
〇読書発想
ショートショートは星 新一が先駆者とのことだが、これをやるには勇気が必要だったと思う。
短いと、どうしても成長とか深みのある物語が展開できず、そのうえで読者を満足させる必要がある。
ただ、ショートの読みやすいメリットを存分に生かした内容で、さらにSFメインといったところが面白い。
SFと分かると物語にそこまで整合性を求めなくなる人も多いだろうし、深刻になりにくいので笑いに持って行きやすい。
おそらく人間の「快適に暮らしたい」といった欲求をターゲットにしているのではないだろうか。
そうすると、他分野への応用も可能となるだろう。
既に販売されているが、恋愛ショートショートが30万部をこえるベストセラーになっている。
あまり深くなり過ぎずに、かといって切ない気持ちを共有するニーズは相当数あるのだろう。
ということは、冒険ショートショート、青春ショートショート、どたばた日常ショートショート、ハーレムショートショートやプロフェッショナルショートショートなどもチャンスがある。
逆に、成長物や推理物、復讐劇、戦争物などはしっかりとした背景、複雑な人間関係、精緻な時系列が必要になるので、あまり向かないかも知れない。
プロフェッショナルでいえば士業ショートショートもアリか。
税理士、社労士、弁護士、行政書士、司法書士などの日常をショートショートでつづるのもワンチャンか。
青春ショートショートなら、10代、20代、30代におっさんの青春も含めても面白いだろう。
それぞれの年代はそれぞれの年代に興味があるから、(10代は自分が20代になった時を想像して・・・など)幅広いターゲット層が狙えるのではないか。
冒険ショートショートでいえば、戦士ショートショート、魔法使いショートショート、僧侶ショートショートから展開していき最終章でパーティ冒険も面白いだろう。
どたばた人気ショートショートは主夫の日常も目を引くかもしれない。
イクメンという言葉がはやっており、男性の子持ち層に安定して読んでもらうコンテンツにもなりうるだろう。
最後に、とても面白い本だった。
寝る前の一日のささやかなリセットに丁度良い内容、ボリュームである。
この作品の著者に感謝したい。