映画版のノベライズとなる。
実は映画よりも先に小説がリリースされ、2か月後に映画が公開されたとのこと。
映画公開は2016年8月26日、小説は2016年6月25日で初版発行、2017年1月25日で30刷りを記録、映画と小説両方でのヒットとなった。
少年少女の恋愛は新海 誠の得意な小説分野である。
君の名は。は男女が入れ替わる、そして3年の時間軸がずれるなど斬新なアイデア、SF要素を含んでいて見るものを飽きさせない。
あっという間に読み終わった。
〇オープニング
瀧が就活中の時期で、瀧とみつはがお互いの生活環境で描くシーンから始まる。
俺は~、私は~、だれか一人を、ひとりだけを、探している。
〇面白さの戦略
男女が入れ替わるドラマや映画は過去にもあるが、男女両方をターゲットにできる仕組みなのだろう。
おそらく、真の狙いは性の描写ではないだろうか。
お互いの体が入れ替わり、入れ替わった自分ではない身体を触ってみる描写があり、そしてお互いを好きになっていく。
メインプロットは瀧とみつはの恋愛だが、序盤はお互いを嫌悪するところから始まり、その中で好きの気持ちに目覚めていくというオーソドックスな展開。
ただ、彗星が糸守町に落下して多くの人が死ぬ災害が二人を近づけ、あるいは遠ざけ、物語の展開をより目が離せないものにしている。
ターゲットは10代から20代の男女と仮定すると、高校生の時の恋愛もマッチするし、糸守町を救うために無茶を実行した展開も違和感がない。
〇ストーリーについて
お互いの高校生活の描写、地域による違いがリアルに描かれ、その人その人の青春が心地いい。
飛騨地方で自動販売機というカフェ、神社や豊かな自然と、東京の本物のカフェ、高層ビルや窓ガラスの街並みは分かりやすく対照的である。
また、友人関係も高校生活をイメージしやすいものにしている。
テッシ-、さやちん、司、高木、バイト先の奥寺先輩などのキャラは人間関係に囲まれながら成長する少年少女時代を容易に想像させてくれる。
誰もが持っているであろう、楽しい高校生活の記憶がベースとなり複雑になりやすい物語構成が、とても爽やかな読後感につながっている。
これを読んだ後に映画も見たくなる、あるいは映画を見てより深く物語りを感じるといった相関的な楽しみも期待出来る。
中古で80円で購入したが、コスパ最強の楽しみであることは間違いないだろう。